第20章 激情②(輪虎side)
(帰り道、葵はいなかった。馬に乗っていたならすぐ分かる…絶対に王都の外だ!あれほど外に出るなと言ったのに…お願いだ…無事でいて…)
途中、よく人にぶつからなかったと思う程焦っていた。
(どこに行った…あの丘は一人で行くには遠すぎる…ならあそこか?)
必死に向かった先は初めて葵と行った場所。あの川の畔だ。
そして、視界に飛び込んで来たのは男3人に囲まれている葵。
一人の男が剣を振りかぶり光が反射するのがのが見えた。
それは今まで感じたことない恐怖…
どんなに苛烈な戦場でも恐怖なんて感じたことなかった。でも、今感じているのは明らかな恐怖だ…
全身から冷たい汗が出てくるのが分かった。
「葵ー!!!」
叫びながら双剣を抜くと葵と男の間に飛び込んで剣を受け止めた。
(間に合った………)
震える程の怒りに戦場でもあまり出したことない殺気が出るのが分かった。
「お前ら…何してる………」
僕の気迫に男達は飛び退き、葵も圧倒されているのが分かった。
「なんだ…テメェ………その女は俺らが見つけたんだ。ん?お前もよく見たら綺麗な顔してるな。二人とも高く売れそうだ。」
男の一人が下世話な目で剣を僕に向けてきたから、その言葉と行動に完全にキレて俯きながら呟いた。
「イラッとするなぁ……」
「あっ?何だ?大人しくしてたら痛い目見ずに済むぞ。」
剣を構え改めて男達に向かい合った。
「いいよ。相手してあげる。でも、とてもじゃないけど手加減はできないよ。」
そう言って飛び出した。もちろん殺すつもりで…
でも、その瞬間葵が叫んだ。
「輪虎!ダメッ!!」
その声に一瞬力が緩んで深く切ることはなかった。