第20章 激情②(輪虎side)
頭を下げてきたがフツフツと違う怒りと恐怖と悲しみの様な今まで経験したことない感情が沸き上がった。
「君は…!何を考えてるんだ!!もし僕が来なかったら…間に合わなかったらどうするつもりだったんだ!!」
思わず大きな声で怒鳴るとビクッとした葵をキツく抱き締めていた。
(無事で良かった…どこもケガしてないね……)
「ご、ごめんなさい…花を摘んで帰ろうと思って…」
戸惑いながらも葵は謝ってきた。
「はぁ…どうして君は…一人で外に行くなって言ったでしょ?ここは君のいた世界とは違うんだから…」
抱き締める力をさらに強くした。
「本当にごめんなさい…輪虎を驚かせたくて…」
「もう君には十分過ぎるくらい驚いてるよ…あんな怖い光景初めて見た…」
改めて恐怖が甦って手も体も小刻みに震えていた。
「え……?」
「どんな戦場よりも怖かった…一瞬、君がいなくなるんじゃないかと思って…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
ようやく僕が怒ってる理由が分かったらしく葵は涙をボロボロ流している。
「もういいよ…お願いだから二度とこんなことしないでね。外に行くなら僕が着いていくから。もし僕が無理なら誰か私兵を護衛に付けるから。はぁ……本当に君が無事で良かった…」
ようやく安堵のため息が出て笑顔になれた。
「さぁ、帰るよ。もうすぐ日が暮れる。」
「はい…」
「全く…ホント目が離せないんだから…」
葵の涙は止まらないが、呆れたように呟くと二人並んで馬をゆっくり走らせた。