第19章 激情①(夢主side)
「輪虎様!いやぁ、葵殿は凄いです。この牝馬を乗りこなせるとは。相性も良いようです。」
「うん、そうみたいだね。このまま葵の馬にする。ご苦労様。」
「いえ、とんでもありません!輪虎様の基本の指導が良かったからです!」
「あはは、それはありがとう。葵、その馬は君にあげる。でも、一人で遠くにいっちゃダメだよ。外は危ないからね。」
「えっ?いいの?こんな立派な馬を貰っても。」
「うん。その馬乗り手がなくて困ってたんだ。」
「そうなんだ。これからよろしくね。」
そう言いながら笑顔で馬を撫でた。
そんな私の様子を輪虎も笑顔で見つめていた。
そして、そのやり取りを見ていた副官は少し驚いているようだった。
事件が起こったのはそれからしばらくしてからだった。
その日は天気が良く、午後から練習も兼ねて少し一人で馬乗りに行こうと思ってしまった。
そしてどうせ行くなら輪虎を驚かせるためあの川の畔の花を摘みに行こうと。
輪虎からは「一人で外に出ないように」と言われていたけど昼間に少しだけなら大丈夫だろうとたかをくくっていた。
でも間違いだった…
川の畔で花を摘んでいると三人の盗賊と思われる男に囲まれた。
剣を向けられニヤリと笑われ恐怖から身動きがとれなくなって声も出なかった。
そのまま一人がゆっくりと振りかぶり剣が光に反射するのが見えた。
(いやだ…殺される……)
顔を逸らして目を固く閉じたその時だった。
「葵ー!!!」
叫び声が聞こえた刹那………剣を受け止める高い金属音が響いた。
何が起こったか分からなかったがゆっくり目を開けると男達の剣を受け止める輪虎の後ろ姿が見えた。
「お前ら何してる………」
(これは誰……?)
それは今まで感じたことない怖い雰囲気。
あまりの気迫に男達は飛び退き、私も圧倒されていた。