第10章 突撃中。
逃げても逃げても追い付かれる、熱い熱いもの。
それが口内で暴れまわって、私を堕落させる。
シャツのボタンを外しながら、首筋に舌が這う。
立ったままのせいで、足がガクガクと震えた。
「っあ‥‥う‥‥‥っ、はぁ‥‥」
きつく吸い上げられていくのを感じながら、彼の制服にしがみつく。
外したボタンから覗く素肌にも、唇が這って。
唇では触れられたことがなかったそこに、きつく紅い痕が残った。
ヒリヒリする。
「‥‥お前‥‥俺のことただの高校生のガキだって思ってんだろ‥‥
一人だけ大人になったようなフリしやがって‥‥」
視界が歪む。
生理的な涙が、頬を濡らして止まらなかった。
くらくらする頭で、必死に考える。
あなたがガキだなんて、思ったことない。
それより、私の方が子供っぽく思えて嫌だった。
劣等感ってやつを勝己くんに対して抱いていて。
どれだけ情けないことか分かっていても、消えてくれはしなかった感情。
悔しくて、虚しくて、でも誰にも縋りつけなくて。
「ウゼェ‥‥、マジで腹立つんだよ、そーゆーのが‥‥
何も分かってねぇ子供とか思ってんのかよ、あ?」
どうして、どうして勝手に話を進めてくの。
そんなこと思ってないのに‥‥‥
‥‥‥思ってない、はず。
私は、普通に同級生のような立場で過ごしてた。つもりだった。
でも、実は『年下だから』って理由で、彼と付き合っていることに引き目を感じていたのかもしれない。
だって、そうだよ。
お母さんと鉢合わせしたときだって、『年下だから』って理由で、遠ざけようとしてた。
「‥‥‥ごめん」
絞り出せるのはこの言葉しかない。
言い訳しようたって、この人にはきっと全て通じない。
「‥‥‥俺のこと何だと思ってんだよ‥‥ッ」
掠れた声がする。
遠くのようで、近い声。
‥‥あぁもう。どうしてこうなるんだろう。
私はただ、勝己くんを想っただけだったのに。
「‥‥ごめんなさい」
「謝って欲しい訳じゃねぇよ‥‥ッ、クソが‥‥」
自分への苛立ちと、何だか分からないけど込み上げてくる衝動。
それが、爪先から暖かな空気を伴って私を包んだ。
ああ、まずい‥‥個性が発動してしまう。
勝己くんの目が、大きく見開いた。