第10章 突撃中。
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爆豪勝己は、渡されたファイルを手にしながら、呆然と立っていた。
「ん? 爆豪それ、母ちゃんが持ってきてくれたの?」
「‥‥‥違ェ」
犯人探しのように騒ぎ始めた上鳴を放って、自分の席まで戻る。
あの事務の女性がファイルを持ってきたのは、ついさっきだった。
何気なく窓の外を見ると。
「‥‥‥あ‥‥?」
────玖暖だ。
玖暖が、このまま大学に行くような服装で歩いている。校舎内を。
その瞬間沸き上がった高揚感を抑えながら、その行く末を眺める。
すると、突然、彼女はこちらに目を向けた。
「!!」
わざとだろうか。いや、そんな筈はない。
なら、偶然か。
偶然合ったであろうその視線は、遠くを見据えていて。
爆豪は、彼女が自分をすり抜けて、何処か遠くを見ているように感じた。
ドクン、と心臓の音が間近で聞こえる。
その視線に射抜かれて、心臓ごと持っていかれたような気がした。
「──ッチ‥‥」
「あー、誰だあの人ー?」
「え? どれ?」
「あそこ歩いてる女の人。うわ、スタイルちょー良い───BOOOM!!!!
ただ褒めただけの上鳴だが、無慈悲にも焼け焦げた。