第8章 求愛中。
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あの後、お母様に駅まで送ってもらって。
「起きなかったらそっちで預かってほしい」と言われたので、快く承諾した。
爆豪さん、起きてるかな。
今日の夕飯、何にしようかな。二人で一緒に食べるかな。
どうしてこんなにふわふわするんだろう。
口許が緩む。ニヤニヤしてしまう。
すれ違うご近所さん達に変な目でみられてしまった。
───って、さっきまでふわふわしてたのに。
今、私の上で眠る男の子の目は、さっきまで、私を殺しそうなほど、燃えたぎっていた。
どうして‥‥どうしてこうなっちゃったの‥‥
今起こしても、また殺されそうになる?
だったら、明日まで寝かせておきたい。
「‥‥どうしたものか」
頬や額の湿布。腕に巻かれた包帯。
見てるだけで痛々しいこの体を、これから先、私は支えていけるんだろうか。
‥‥‥ダメダメ。ちゃんとお母様と約束したんだから。
爆豪さんのことも、怖がっちゃダメだよね。
「‥‥‥爆豪、さん」
「‥‥‥」
起きない。
「‥‥爆豪さん!」
「‥‥‥」
起きないな。
個性強めに発動しちゃったかな‥‥
「‥‥‥勝己!」
「!」
起きた!?
え、下の名前で起きるの? それとも叫んだから!?
肩をピクリと震わせた爆豪さんは、どうやら状況を把握したようで。
目の色が、また変わった。
「‥‥‥チッ‥‥」
「ッ、痛ッ」
手首がギリギリと痛む。ゆっくり起き上がった爆豪さんは、また殺気に満ちた目で私を見下ろした。
「‥‥テメェ‥‥さっき、何しやがった」
「私の、個性」
ピクリと肩眉が動いた。
「‥‥お前‥‥そうか‥‥」
思い当たった、みたいな顔をされた。
え? 前にも同じようなこと、したっけ?
「‥‥‥言えよ。俺にも言えねぇような場所だろーが、言えや」
「‥‥それは‥‥」
───『会ったことは、勝己には内緒ね』
さっき、別れ際にお母様に言われた一言。
こんな殺されそうな状況でも、内緒ですか‥‥!?
「‥‥‥言えない」
「あーッ、クソッ」
ガシガシと髪を掻き乱す爆豪さん。
少し‥‥怖い。でも、秘密は秘密だから。
「‥‥テメェ、俺以外の男に浮わついてるってんなら、マジで絞め殺すからな」
「‥‥え?」
‥‥‥え?
‥‥なんか、それって、