第7章 伺い中。
「ははっ、大人か!」
警戒に笑うお母様。
今頃気恥ずかしくなってきて、ここに爆豪さんが居なくて良かったって心から思った。
「そんなこと言ってくれた子、生まれて初めてじゃない? 勝己」
「そうですかね‥‥」
だけど、黙ってればあんなに容姿端麗な人、他の女子が黙っていなさそうなんだけどな‥‥
きっと、学校とかでモテ倒してるんだろう。
「最近、遅くまで帰って来なかったりしてたのは、そういうことだったのね」
「! あ!」
そうだ。謝らないと。
「ごめんなさい! 折角のご飯が‥‥」
「ごはん?」
「折角、ご飯作って待ってるのに帰って来なかったら‥‥それは、心配されますよね。本当にごめんなさい!」
ガタッと立ち上がって頭を下げる。
怒られる。謝りに来たのに、何をトンチンカンな話してたんだろう、私。
「‥‥謝らなくていいよ」
「え?」
顔をあげると、優しい笑顔がそこにあった。
「私は、どこか危ない場所に行ったりして暇潰ししてるってんなら、一発かまそうって思ってただけ。
玖暖ちゃんの所に行ってたんなら、逆にこっちが迷惑かけてないか謝るとこよ」
「そ、そんな‥‥」
迷惑なんかじゃない。決して。
座りな、と肩を押される。
そして、まるで自分の子供にするように、頭を撫でてくれた。
‥‥あ‥‥何だか‥‥昔に戻ったみたい。
爆豪さんも小さい頃、こうやって撫でてもらってたのかな。
安心する。
「ありがとう、勝己の傍に居てくれて。あいつ、家でも全然口きかないから」
「‥‥こちらこそ、本当に、感謝ばっかりです」
生んでくれてありがとうございますって、言いたい。
こんなに、大事に思ってくれてる人、今まで居なかったから。
爆豪さんに会いたい。
会って、思いっきり抱き締めてみたい。
あの甘い香りに、包まれたい。