第5章 濃い恋中。
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「‥‥‥ん‥‥」
何か夢を見ていたような気がする。内容はさっぱり忘れてしまったけど。
でも、忘れるってことは大した夢じゃないってことだ。
そんなことを、うつらうつらとしながら考える。
周りに視線を巡らせば、薄暗い部屋の中だった。
「‥‥爆豪、さん‥‥帰ったのか‥‥」
この前にみたいに身体に重みがないところからして、私を運んでから帰っていったのだろう。
あれ? でも服着てる‥‥
「‥‥‥見られた‥‥!?」
バッと服の中を見れば、ご丁寧に下着までちゃんと着けていた。
いや、確かに裸は見たことあるけど、それは暗い中だったから大丈夫だっただけで‥‥全然見られて平気~なんてことは断じて無い。
悶絶しそうになる。声にならない叫びを心の中に閉じ込めた。
「ふぅわぁぁぁあ‥‥」
欠伸をして、起き上がる。やっぱり人の気配は見当たらなかった。
少し、寂しくなる。
何も置き手紙が無いのが彼らしい。だけど、ポストの中に鍵がちゃんと入っていた。
何かをする気にもなれなくて、明日の大学のことすら考えるのも億劫で、もう今日は寝ようと布団を被った。
「‥‥‥‥‥‥寝れないな‥‥‥」
そういえば、さっきの夢、前も見たことあった気がしたな。
何だったっけ‥‥地元の風景と、ラムネ? があったような気がする。
ラムネを最後に飲んだのは、高校三年の夏休みだったような。
何度も見る夢だから何か意味があるのかなって思ってみるけど、そんなの脳みそに訊かないと分からない。
どうしても目が閉じてくれないから、何か飲もうと立ち上がった。
台所に向かって、レモンティーを出す。
ちょうど窓から、雄英高校が小さく見えた。
あんなにピカピカで大きな建物だもの。遠目でもまぁまぁ存在感ある。
私も、あそこに通えていたら、何か変わっていたのかな。
ヒーロー、なれていたのかな。
でも私の個性地味だしなぁ‥‥眠らせるとか、そういうのだけだし。
そういや、爆豪さんの個性って何なんだろう‥‥見たこと無いな。
夜中だからか、一人だからか、独り言っぽいものがどんどん出てくる。
「‥‥私、どうしたいんだろう」
爆豪さんと、このまま付き合うの?
爆豪さんは、本気なの? それでいいと思ってるの?
想いがねじれて、絡まっていった。