第5章 濃い恋中。
「いッッッッ!」
痛い! なんで!? なんで噛むの!?
噛まれたところが時間差でヒリヒリしてくる。残った痕が、痛々しく赤黒くなっていった。
「何すん、」
「黙れや」
「んんっ‥‥」
今日何度目かも分からないキス。
でも、さっきみたいに荒々しいのじゃなくて、優しいキス。
こういうキスは、胸の奥が甘く苦しく絞まる。
切ないような、ドキドキするような。
「‥‥お前、男馴れしてねぇとか何とか言われてたよな」
「え、いや、まぁ、そこまで知ってる訳じゃないけど」
他人に言われるとショックだな。
「‥‥俺が教えてやる」
「へ?」
ちゃぷん、と水が跳ねた。
後頭部と背中に腕が回って、きつく抱き締められる。厚い胸板に身体が硬直していくのが分かった。
「‥‥そういうことされると、男は調子乗んだよ」
「え?」
耳元に降る声は、妙に艶かしくて。
身体が急激に火照って、こめかみを汗が流れていく気がした。
「、ぁ‥‥っ」
耳が‥‥耳が熱い。何? 舌? 感じたことない感触に頭がショートしそうになる。
「ちょっ、ふざけないでよっ」
「調子乗るっつったろが、アホ」
それ、理由になる訳じゃないから!
離れたいのに、ホールドされては逃げようにも逃げられない。
そのうち、頭がクラクラしてきた。
あ、やばい‥‥
「の、‥‥逆上せた‥‥」
「あ? ! なっ、 おいッ」
今日は災難だ。
講義は遅れそうになるし、お母さんと爆豪さんが鉢合わせするし、逆上せるし。
爆豪さんにもたれ掛かるようにして、意識を手放した。