第4章 和み中。
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「ほんじゃ! また来るわー」
「うん。ありがとうお母さん」
「勝己くんも! よろしくね」
「おう」
本当にすべての家事を終えてから帰っていったお母さん。
泊まっていけばいいのに、「新幹線間に合わへんから」って帰っていった。
あっという間に8時。
「爆豪さん、帰らなくて大丈夫なの?」
「あ? ‥‥ああ、まぁな」
「‥‥家出とかじゃないよね?」
「あぁ!? 違ェわ、アホか!!」
「ならよかったー」
ふたりでソファに座ってテレビを見る。
不思議。この前会ったばっかりの人と同じ空間でテレビ見てる。
「‥‥さっきのさ、」
「あ?」
「さっきの、本当?」
「何が」
「‥‥本当に、証明してくれるの?」
口を尖らせて視線を逸らされる。
その横顔、堪らなく好きだ。
「‥‥いちいちしょうもねー嘘つくかよ」
毎度毎度、遠回りな言い方。
核心を突かないその言い方、本当はいけ好かないって思ってたけど。
今は、すごく嬉しい。
「‥‥ありがとう」
「そう思うんなら、キスでもしてみろよ」
「なんで!?」
意地の悪い笑顔で見つめられると、胸の奥の方がぎゅうっと絞まる。
痛いけど、嫌いな痛みじゃない。
「‥‥俺のこと、好きじゃないんか」
「‥‥っ~」
その声は作ってる声だろ…‥
「目、目! 瞑ってよね」
「おー」
さっさと終わらせたくて、グッと引き寄せてふわっと重ねた。
眉を寄せた爆豪さん。
「‥‥アホか」
「え?」
「こんなん、キスって言わねーだろ」
「っ!? んむっ‥‥」
後頭部を抱えられる。
ちゅっと音を出して触れるだけのキス。
でもそのうち、舌で唇をつつかれた。
「‥‥出せ」
「‥‥っ、もう‥‥」
渋々口を開けば、熱い熱い甘いものが口内を暴れまわる。
「んんっ‥‥ん‥‥」
‥‥苦しい‥‥
くらくらする頭が、爆豪さんの肩を掴むように命令する。
掴まっていないと、倒れそうだった。
掴んだ手を、握られる。
そのまま、結局倒された。
「‥‥っ、クソ‥‥っ」
「? っあ‥‥!?」
切羽詰まったような声が、その表情が、心を揺さぶる。
さっきから、鳴り出した心臓が止まない。
首筋が温かく湿って、鎖骨に紅い華が咲く。
それを感じながら、どうしようもなく幸せなのだと自覚した。