第1章 仕事中。
────華々しいあの頃、終わり。
今思えば、高校生って一番楽しい。
今通ってる大学も、楽しい。楽しいけど、高校生活に比べたら山積みなものが多い。
一人で食べて生きていくことの大変さ。あの頃は、帰ればご飯が待っていた。今はもう、自分でやり始めないと何も出てこない。
まぁ、当たり前なんだけど。
でも、やっぱり、甘えてたんだなって痛感した。
一年前、高校生を終えた私。
ごく普通の共学校で、ごく普通に遊んで学んで、超楽しかった。
でも、卒業してから始めたバイトも、時給は高いにしてもそこそこ過酷。
大学に通いながらだから、その過酷さは日に日に増していった。
貯金を切り崩しながらの生活。
多目に貯めておいてよかったと心の底から思っている。
「‥‥ちゃん‥‥‥玖暖ちゃん!」
「え、あ、はい!?」
ぼんやりしていた頭が一気に覚める。
いけない、仕事中だった‥‥
「なんでしょう?」
「いや、ぼーっとしてたからさ。
疲れが溜まってるのは分かるけど、あともう少しだから、頑張ろう」
「‥‥はい」
とか返事して。
あんたが一番がんばらなきゃいけないんでしょ。って。
このカラオケ店でバイトをしている私。
ここの店長が本当にポンコツ‥‥っていうのは内緒ね。
頑張ってる、私たちより、ずっと。
それは分かってるんだけど、「頑張ってる僕、素敵」オーラがすごい。
それでもここを辞めないのは、やっぱり時給が高くて家からも大学からも近いから。
ここら辺って、時給安いところばっかりだから。
「いらっしゃいませー」
「それでよー、この前緑谷が‥‥」
「俺の前でアイツの話すんなや、クソが」
「そんなこと言わねーで、聞こうぜ、爆豪」
「さ、わ、ん、なッ!!!」
本日、午後6時半頃のお客様、来店。
この、どこにでもいるような高校生が、私の世界を変えるなんて。
私も、きっと神様も、予想していなかっただろう、な。