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あの日、あの時、路地裏で。

第5章 路地裏 in ハンジ&モブリット





「ここだよ!」

「ありがと♪
 へぇ~……この路地裏かぁ…」


両手を後ろで組み、上半身だけを傾け建物の陰からひょいと顔を出すハンジ。日に照らされ、少し赤味を増した焦げ茶のポニーテールが揺れる。

その足元では、パン屋の娘が同じようにして顔を出す。
頭上のツーテールには可愛らしいリボンが巻かれ、ハンジと同じ動きで揺れる。





「何かあれば、遠慮なく聞いてくださいね」

「はい。ありがとうございます」


その反対の建物の陰からは、見るからに真面目だねこの人。と誰しもに言わしめる風貌のモブリットがハンジと同じ方を見据え、立っていた。
その表情は些か険しい。何かを探っているようにも見える。

そんなモブリットの傍ら、花屋の女店主が一歩下がった場所から控え目に同じ場所へと視線を送る。
こちらは至極落ち着き払っていた。何せ、今いるのは自宅兼店舗の脇だ。慣れたものだろう。





都合四人。

絶えず聞こえる喧噪を背に、パン屋と花屋の間に延びる路地を揃って仲良く覗き込む。

足元に延びる影は、ざっくりと二歩分。

影の主よりも先に、目的のその場所へと一歩を踏み入れていた。




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