第3章 路地裏イチャイチャ in ミケ
路地裏にて。
両手、いや両腕で抱え込むようにして荷物を持つミケ。
その隣には、小さなメモだけを持つが立っている。
「…これで全部か?」
「はい」
ミケの前髪がさらりと流れる。
その視線の先、覗き込んでいるメモ用紙には、足りなくなった備品やら頼まれたお使いの品やら、沢山の品名が丁寧に書きこまれていた。
「よし、帰るか」
「はい。……あの、半分いただけますか?」
「駄目だ」
無口な割に、こういう時には即答。
「分隊長…」
「……」
ミケの両腕は、買い込んだ諸々で塞がっている。
だがそれ自体は買い物に来る前からこうなると、分かり切っていた。
だからこそ、ついてきた。
「下さい。でないと、私のいる意味がありません」
「…駄目だ」
何故頑なに拒むのか。
その理由は、今抱える物量に依るところが大きい。
だが勿論それだけではなかった。
今日も今日とて、大勢の人で賑わう市場。
こんな中、荷物を持たせてを歩かせたくない。例えどんなサイズの物だろうとも。
(ぶつかって転びでもしたら…)
そんな事を考えながら、ミケは路地の入口をちらと見る。
「!」
「ここは…そうか…」
「どうかされましたか?」
「いや…またここに来るとは、な」
買い忘れがないか、立ち止まり確認する為に一歩入り込んだ路地裏。
ここは以前にも訪れたことがあった。
いや、正確には"連れてこられた"のだが。
「……フ。夫婦漫才…」
「?」
二人とも、暫く赤みが抜けなかったな…等と思い出していれば、まるで応える様に静かに開かれる二つの扉。