第2章 路地裏イチャイチャ in ゲルガー
「ほら」
「ぇ」
「帰るぞ」
「あの、でも…でも、っ……」
「ぐだぐだ言ってんじゃねぇよ。いいから早くしろって」
あー…
何だ、もうちょっと言い方ってもんがあるだろ、俺。
こういう時、さ
団長なら、もっと優しく。もっと丁寧に。
例えるならダンスに誘うみたいにさ。いかにも紳士、正統派って感じでな。
ミケなら、何も言わない変わりに頭でも撫でてやりそうだ。言葉がなくても通じるっての?普段無口だから、余計に似合うだろうな。
兵長なら、有無を言わせない、目にも止まらぬ早業で。強引だけど、それが意外にもスマートだったりするんだ。あれだよ、普段とのギャップに萌える!とかいうやつ。
「う”ぅ”え”ぇ”ぇ”」
「ほら、さっさとしろって。いつまでも此処にいるつもりか?」
…俺、だめだな。
いや、違う。
手本にする相手を間違えた。
誰だってあの三人みたいにはなれない。凄すぎんだよ、あの人らは。
クークには悪ぃけど、特別、何かするってのも変な気分だ。
だから
俺は、俺で、そのまんまで。
「…っ、もし、は、吐いたら…」
「いい」
「そんな…!」
「お前だったらいいって言ってんだよ」
「!」
「いいから早くしろ。腰にくる」
「……あの、それじゃ…し、失礼、します」
そう言ってからすぐに、背中にずっしりとした重みが…
あ、いや、思ってたよりも軽い。
女おぶったの初めてだから、誰かとは比べられないけど。
「…あの…こ”め”ん”な”さ”い”」
「気にすんな…っと、よし、行くぞ。
無理だけはするなよ、いいな?」
「あ”い”…す”み”ま”せ”ん”…」
おいおい、また濁点付け出したな。
この調子だと…もしかしたら…
兵舎までもたねぇんじゃ…
ま、まぁ、なんだ、あれだ。
いいと言った手前、何があっても受け止めてやる。
男に二言は、ない。
だが、頼む。
出来れば堪えてくれ…!
了