《おそ松さん》ただただ望んでいた《夢も現も崩壊系ストーリー》
第5章 夕暮れと笑顔
送信した。
そういえば、今朝会った。
あの3人が言ってた、四男の一松って人。
闇松とかネコ松って言われてたのが印象的だったけど…やっぱ、ネコ好きなんだ!!今朝、路地裏で会ったあの人ってことで間違いないのかな!?
ドンッ
「んぐ」
「ぬひゃあ」
スマホ画面を見ながら考え事なんてするものじゃなかった。前から歩いてくる男性に全く気づかず、ぶつかった。情けない声をあげて、尻もちまでついてしまった…
「いてて…すみませんっ」
「いや…こっちこそ、すみません」
ボソボソとこぼれた低い声。
顔を上げると見慣れた顔があった。
今日一日の間だけで、何回見たことだろう。
彼は驚く私を見て心配したのか、屈んでくれた。
「…大丈夫?」
「あ、はいっ…ん~よっこらせ」
服についた汚れをはたきながら一松の方を見た。
今朝会った時と全く同じ服装だったが、足元を見ると今朝は見かけなかったネコがいる。橙色の毛並みをしたネコ。少し眠そうな目をしてる。
一「あ、あの…なにか?」
「あ、ごめんなさい!改めて、そっくりだなーって思って。んーと、一松…だよね?」
さっきから彼をジッと見ていた私に少し戸惑っていたらしい。私が彼の名前を口にすると、わかりやすく動揺し始めた。
一「…!な、なんで俺の名前」
「あー怯えないで!名前はね、あなたのお兄さん方から聞いたんだ。今日、ナンパされて仲良くなったから」
一「え…兄さん達から?」
一松は安堵した表情に戻った。それとほぼ同時に、少し呆れたようにため息をついた。
一「なんか…迷惑かけてない?」
「あーうん。なかなかクセが強かったけど、楽しかったよ!私も普段はあんまり男子と話さないからね…」
一「そう…ならよかった」
「うん!あ、そうそう。私の名前は○○。トッティには連絡先教えてあるから、また会うことがあればよろしくね。一松っ」
一「ん…よろしく」
一松はやっぱり、他の子とは違ってかなり恥ずかしがり屋だった。人と話すのは苦手というか、兄弟以外の人と話し慣れていなさそうな感じがした。なんとなく察してはいたけど…まあ、そりゃ初対面だししょうなないか。次に会う時には、彼の警戒態勢が少しでも崩れていることを願う。
一松は猫を抱き抱え、
夕日に向かって消えていった。
(嘘でもいい、虚像でもいい。弄ばれるだけでもいい。少しだけでも夢を)
