第35章 【戦国Xmas2020】武田信玄編
「信玄様、もうすぐ十二月二十五日ですね」
師走に入り、とても冷え込んだある日の事。
恋仲である美依が、何やらわくわくしたような声で言った。
十二月二十五日…に何かあっただろうか。
考えても特に思い当たる節がなく、俺は若干首を傾げて美依に問いかける。
「十二月二十五日に何かあったか?」
「クリスマスですよ、信玄様!」
「くりすます…?」
「キリスト教にとって大切な日なんですが、五百年後では宗教関係なく年中行事としてお祝いしたり、楽しんだりするんです。前夜祭って感じで二十四日からお祝いしますね!」
「へぇ…」
南蛮から宣教師によって伝来した、神教に関する日らしいと何となく察した。
美依が『吉利支丹』とは聞いたことがないし、五百年後では単なる祭り行事の一つなのだろうと。
だが、美依の楽し気な雰囲気を見ると…
もしかしたら、その行事を俺と楽しみたいのかもしれないな。
そう思い、俺は隣に座る美依を引き寄せると、胡座の上に座らせ…
穏やかに笑みながら、再度美依に問いかけた。
「具体的にどんな楽しみ方をするんだ?」
「贈り物を交換したり、宴を開いたり…あとは、サンタクロースが贈り物を持ってくる…なんて話もありまね、ふふっ」
「さんたくろーす?」
「実在する人ではないと思うんですが、二十四日の夜に贈り物を持って、寝ている子供達の枕元に贈り物を置いていくんです。小さい頃は私も信じていて…枕元に贈り物があった時には嬉しかったんですよ。実際にはお父さんとかお母さんが、置いてくれていたんですが」
「なるほどなー、夢がある話だ」
(子供達の枕元に贈り物を、ね……)
と、その時。
ある『妙案』かつ『名案』が頭に浮かんだ。
これなら、美依と『くりすます』が楽しめる上に人々も幸せになる。
ちょうど『あの男』に何かしてやりたいと思っていた所だ。
美依絡みなら、嫌とは言わないだろうし。
むしろ、渋々でも喜びそうな気がする。
俺はふっと笑うと、良い案を授けてくれた愛しい女の唇を軽く啄んだ。
びっくりするように目を輝かせる美依に…
俺は、ある『くりすますの妙案』を提案する事にした。