第34章 〖誕生記念〗長い一日の終わりに温もりを寄せて / 石田三成
(あれ、美依様…?)
天気の良い、麗らかな朝。
目が覚めてみると、一緒に眠ったはずの美依様の姿がなかった。
おかしいな、昨夜も蕩ける程愛し合って…
多少無理させた自覚があったから、美依様は起きるのが辛いだろうと思っていたのに。
目覚めてみれば、褥には私一人。
……どうりでやたら広くて冷たい訳だ。
「朝餉の準備にでも行ったのでしょうか?」
すぐに起きるのも面倒くさくて、思わず褥の中で丸くなる。
せめて、一声掛けていけばいいのに。
まぁ、すぐに会えるだろうが…
あの方の寝顔を見れなかったのは残念だ、何故美依様より先に目覚めなかったのだろう。
そんな風に思いながら、微睡んでいると…
足の先からするり…と温かいものが入ってきて、それは私のお腹の所で丸くなった。
おやおや、久しぶりですねと。
私は苦笑しながら、その『温かいもの』を優しく撫でる。
「ねこさん、褥に入ってくるの久しぶりですね」
「にゃー…」
「美依様を見かけませんでしたか?」
「……にゃー」
美依様と閨を共にするようになってから、ねこさんはあまり布団に入って来なくなった。
もしかしたら、本人なりに気を遣っているのかもしれない。
優しく身体を撫でて、頭から首辺りをくすぐってやると、ねこさんはゴロゴロと喉を鳴らす。
だが、ねこさんに聞いても、美依様の居場所なんて解らないか…と。
私はもう一度苦笑しながら、今度は起き上がった。
「ねこさん、私はもう起きますが…まだここで丸くなっていますか?」
「にゃぅー…」
「ふふっ、不満そうな鳴き声ですね。でもそろそろ起きなければ」
(久しぶりにねこさんを温かいと思ったな)
美依様と恋仲ではなかった頃は、ねこさんと一緒に眠るのがお決まりだった。
確かに触り心地は良く、温かいなぁと思っていたけれど…
あの方の温もりを知った今では、ねこさんでは少しばかり物足りない。
あの温もりは私に心地良さを与え、同時に激しい欲求まで呼び起こす。
でも、それが愛しくて堪らない。
抱けばとても満たされる気がするから…もう、手放せないくらいに溺れているかもしれない。