第33章 〖誕生記念〗彩愛-甘やかな嘘- / 明智光秀
「これで、いいのか?」
「光秀さん…」
「うん?」
「お誕生日、おめでとうございます」
「それは朝も聞いたが?」
「言いました、でも……」
美依は手を伸ばし、俺の頬にそっと触れてくる。
まるで愛おしむように撫でられて…
思わず目を見開けば、美依はゆっくりと柔らかな声を紡いだ。
「何回も言いたいんです。光秀さんがこの世に生まれてきてくれて…本当に嬉しいから」
「美依……」
「生まれてきてくれて、ありがとうございます。私と出会ってくれて、ありがとうございます…愛していますよ」
(……それは閨で言う台詞ではないな)
俺はふっと笑み、その頬に当てられた手を取り甲にちゅ…と口づける。
今度は意地悪でも何でもない…
俺なりの『敬愛』を込めた、口づけだ。
俺は、お前が眩しい。
時に眩暈がするほどに。
それでも…お前を愛せて良かったと思う。
こんな激情を知る事ができたから、
こんなに幸せな誕生日はない。
愛する者と触れ合えて…
愛していると、言ってもらえて。
「ありがとう、俺もお前を愛しているよ」
「…っ、ありがとうございます」
「礼を言うのは俺の方だろう、こんなに…」
「……?」
「愛しすぎて、息も出来ないくらいだ」
ふわりと抱き締めれば、熱い肌同士が触れ合い、まるで焦げる感覚までした。
美依は背中に腕を回し、そっと引き寄せてきて…
さらに密着して、熱が移る。
このままくっついて離れなければいいのに。
もう二度と、二つに分かつ事なく、ずっと。
自然と重なった唇は、お互いの奥まで探るように、ゆっくりと絡まっていく。
甘い水音が部屋に響き…
二人の息遣いまで溶け合って、蜜な時間がまた濃くなったような気がした。
────ああ、堪らなく満ちている
お前を蕩かすと決めたのに、結局満足しているのは俺の方かもしれない。
そのくらい、満ち足りた感じがする。
隙間など、無いと思えるくらいに。
「んっ…どうした……?」
すると、美依が何やら身動ぎするので、俺は唇を離して顔を覗き込んだ。
美依はまた蕩け出した表情をしながら…
少しだけ申し訳なさそうに、小さな声を紡ぐ。