第32章 〖誕生記念〗蛍火、恋空に瞬け / 伊達政宗
*政宗BD、おまけ*
「なるほど…光秀様、かしこまりました!早速私は所定の位置につきますね!」
政宗と美依が廃墟に蛍を見に行った、誕生日前夜の事。
その廃墟近くでは、安土の武将達が集まり、なにやら密談を繰り広げていた。
三成は光秀の指示通り、藁のずだ袋を重そうに引きずって移動していく。
その後ろ姿を見ながら…
家康は半ば呆れ半分で溜め息をついた。
「何あれ…なんであんなに楽しそうなの」
「三成に足音立てずに引きずって二人を追いかける…なんて事出来るのか、光秀」
「秀吉、引きずる音に足音は紛れてしまうから問題ない。家康と信長様はこれを」
光秀はニヤリと笑い、後ろで控える信長に桶に入れたこんにゃくを差し出す。
信長はそれを受け取り、愉快そうに笑みを浮かべ…
玩具を見つけた子供のように、その紅い目を光らせた。
「こんにゃくで驚かせる作戦か、原始的だが面白い」
「足元にでも転がせば、美依は確実に踏んで転ぶでしょう。そうすれば、必然的に政宗が運ぶ事になりますから」
「なるほど、仲直りするきっかけ作りか。美依に怪我をさせるのはアレだが…」
「秀吉さん過保護すぎますよ、この際手段なんて選んでられませんから。政宗さん、最近イライラしっぱなしで、こっちは迷惑してるんです」
家康は秀吉の相変わらずの過保護っぷりに、また溜め息をつき…
そして、信長と共に廃墟の入口で、闇に紛れて座り込む。
光秀はそれを確認し、その後秀吉と共に廃墟の中へと足を踏み入れた。
「今は廃屋敷は野党や浮浪者の巣窟になっているからな。それを排除しなければ、政宗達が安心して蛍鑑賞出来なくなる」
「城下の治安を守るためにもなるからな。ったく政宗…信長様にまでこんな事させて、覚えとけよ」
「信長様本人が一番乗り気だったがな。さぁ秀吉、行くぞ」
「ああ、解ってる」
こうして、政宗達が到着するまでの間、秀吉と光秀の刀が闇夜に煌めき…
廃屋敷が静寂を取り戻すまで、僅かな時しか掛からなかったとか。
政宗達を襲った『不気味な出来事』
それは安土の武将総出で行われた『仲直り大作戦』だった。
勿論、政宗達がそれを知る訳もなく…
二人はお互いに思いを抱えたまま、ぎこちない時間を過ごしていたのだった。
了