第3章 〖誕生記念〗揺れる桔梗と初染秋桜《後編》/ 明智光秀
「……可愛いとは、どういう意味だ」
「そのままの意味ですよ、ふふっ」
「ほう、俺を馬鹿にするのか、いい度胸だ」
「へ?ち、違っ……」
「そういう事なら美依、こちらにも考えがあるぞ」
「あっ……!」
ちゅうっ……
首筋に強く吸い付けば、そこにはくっきりと紅い花びらが咲いた。
ここなら、着物でも隠れない。
俺を『可愛い』扱いした罰だ、美依。
「光秀さんっ、こんなとこ酷い!」
「酷くはないぞ、お前は俺のものだからな」
「まだみんなに言ってないのに……」
「いい口実が出来て良かったな、美依」
「〜〜〜……っっ!ほんっと、意地悪!」
「おや、今さらそれを言うのか?」
────お前、俺に意地悪されるの、好きだろう?
運命とは、全くもって奇異なもので
俺にとってお前は、ただの『小娘』でしかなくて、
まぁ、からかえば可愛いな、とは思ってはいたが……
それでもいつしか『小娘』は『女』になり、
俺の全てを掻っさらっていった。
もうそれは、誤魔化しようのない現実だ。
あの日、お前を守りたいと、
ずっとずっと、守っていくのだと、
お前が俺の心に住み着いた日から
お前の『初めて』は、俺が全て奪ってやりたいと思った。
────初染秋桜、願わくば俺色に芯から染まれ
それが叶った今だから言える。
秋桜のように、淡く紅色を帯びたお前に、
俺の心を素直なまま、紡いで伝えられる。
「愛しているよ、美依」
そう言ったら、お前は首筋の痕を押さえながら、さらに真っ赤に染まった。
もう少し、一緒に居よう。
夜が明けるまで、抱き合って、口づけて。
もう少し、お前を堪能させてくれ。
俺は、俺の誕生日に手に入れた、この世で最高に尊いものを、決して離したりはしない。
例え、硝煙に塗れても……
必ず、この手で抱きしめ直すからな?
────願わくば俺も、お前色に染まれ
揺れる桔梗は、青みを帯びた紫。
お前色に染まったなら。
まるで秋空のように、優しく澄んだ天色になる。
〖誕生記念〗揺れる桔梗と初染秋桜《後編》
終
✯ℋᵅᵖᵖᵞ ℬⁱʳᵗᑋᵈᵃᵞ✯
Akechi mituhide