第28章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【中編】/ 徳川家康
『家康は、エッチしたことある?』
『なんでそれを俺に聞くの……』
『私さー、まだ経験ないんだぁ、家康は?』
『……内緒』
『えー、気になる!』
『気になっても教えないから』
『ふーんだ、ケチ』
『ケチでもなんでも内緒』
『あ!家康、今日誕生日だっけね!』
『切り替え早いね…まぁ、そうだけど』
『誕生日プレゼント、あげるよ。何か欲しいものとかある?』
『……』
『家康?』
『……が、欲しい』
『え?』
『────美依が、欲しい』
1月31日、俺の誕生日。
無理やり貰った『誕生日プレゼント』は…
ほろ苦く、かつ鮮明に、
俺の記憶に深く刻まれた。
白い吐息が、教室中に漂って。
酷く、雪が降りそうなほど寒かったのに…
俺は熱くて、美依に焦がれて、
焼け付くような想いを抱えていたんだ。
────あれから、数年
美依によく似た彼女も出来て、
どうやらあんたにも彼氏が出来たようで。
あれは本当に『無かった』時間だと、
そう俺達の中では認識していた筈なのに…
また、同じ時は繰り返すのか。
俺が想っているのは……
紗奈か、
美依か、
俺は、
心に誰を想えばいい───………?