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【イケメン戦国】零れる泡沫*恋奏絵巻*《企画集》

第27章 〖誕生記念〗想ウ、君ノ名ハ【前編】/ 徳川家康







『────………家康』







ああ、まただ
誕生日が近くなると、あんたを思い出す。

あれは、俺達にとっては
『無かった』時間なんだ。
でも──……
俺は忘れた事、ないけど。

ねぇ、美依
あんたは、今どうしてるの?

大学を卒業してから、
獣看護師として生活してるだろうか。
今は彼氏とか、出来た?
俺は出来たよ、可愛い彼女が。

だから──……
こんな気持ちにはそっと蓋をするんだ。

今は冬。
寒さも厳しい、雪の降る季節。
あんたを温めるのは、俺じゃなくていい。


でも、













────どうか忘れないで
あの日の俺達を、俺の想いを














「はい、おしまい」



足の包帯をきっちりと止め、俺は小さく息をする。
怯えるように俺に包帯を巻かれていた、ダックスフンドのメロは、途端に俺にじゃれつくように尻尾を振った。

こんなに元気なら、問題はないな。
まったく、ソファから落ちて骨折なんて、元気良すぎ。

俺はメロを抱き上げ…
背中を擦りながら飼い主に渡してやる。
すると、飼い主もホッとしたような顔つきになった。




「ギプスはもう必要ないので、あとは患部を噛まないようにだけ注意してください。痛がるようなら、すぐに連れて来て」

「はい、家康先生ありがとうございます!」

「一応散歩はまだ控えてください、お大事に」

「解りました」

「メロ、おてんばも程々にしなよ?」

「わんっ!」




俺が飼い主に抱かれるメロの頭を撫でながらそう言うと、メロはそれに答えるように元気良く鳴いた。

今日の診察はこれでおしまい。
壁にかかっている時計を見れば、すでに夜の七時半を過ぎていた。

メロとその家族を見送り、白衣の首のボタンを一つ外して、ふぅっと一息つくと…

事務の女の子が、にこにこと笑いながら診察室のドアを開けた。




「白井さん、今帰られたので準備中の札下げましたよ、家康先生」

「ん、ありがとう」

「今日もお疲れ様でした!」

「うん、お疲れ様」




俺は簡潔にしか返事をしていないのに、その事務の女の子は嬉しそうにまだニコニコしてこっちを見ている。

あーもう、仕方ないな。
俺が彼女に向かって手招きすると…
彼女はまるで小動物のように、ちょこまかと診察室に入ってきた。







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