第15章 【戦国Xmas】徳川家康編《前編》
────俺の天邪鬼は天下一品だ
ひねくれ者なんて、言われなくても解ってる
俺はそれを自分の性分だと思っていたし
そもそも、直す気もさらさらなかった
しかし…
あんたと居ると、それもどうかと考える
素直に気持ちを伝えられたなら
どんなに楽なんだろうと、そう思う
あんたに対して、膨らんだ想いは…
すでに制御出来ないくらいに
俺の中で暴れ回っているからだ
『────すきだよ』
たったひと言でいい
あんたに、そう伝えられたら
この雪降る夜も、鮮やかに煌めく
聖夜というものがあるのなら
それに賭けてみてもいいのかな
想いよ、伝わるようにと
口づけに込めた、精一杯の魔法に──……
「今日は随分浮かれてるね、あんた」
今は年の瀬、師走も終わりに近づいた頃。
いつもふにゃふにゃしている美依が、いつも以上に呑気に笑っているので…
不思議に思い、俺は軍議終わりに、そう美依に話しかけた。
(やっぱり、なんか表情筋がゆるいな)
美依の顔を見て、それを確信する。
この子は普段からにこにこしている子だが、今日はそれに輪をかいて口元が緩んでいると。
そうは思ったが、疑問が残る。
今日、特別何か良いことがあったのだろうか。
「今日はクリスマスイヴだから、うきうきしちゃって」
「くりすますいぶ…って、何」
美依から聞きなれない単語が出て、思わず首を捻った。
この子はたまに妙な事を口走る。
まぁ…未来から来たんだし、多少の言葉の差は仕方ないけれど。
すると、美依はにこにこと笑いながら人差し指を立て、どこか得意げに言った。
「クリスマスはね、私がいた時代では冬の一大行事なの。元々は神様が生まれたのを祝う日なんだけど、そんなの関係なしにみんなでワイワイ楽しむんだ。その前夜をイヴと言って、前夜からお祝いするんだよ」
「へぇ…何をするの?」
「みんなで宴を開いたり、贈り物を交換したり…あ、素敵な言い伝えなんかもあったかな」
(ん……?)
そこまで言うと美依はほんのりと頬を染めた。
何か照れるような事言ったか?
それに、素敵な言い伝えとはなんだろう?
俺はまた疑問に思い、それをそのまま言葉に紡ぐ。