第1章 【ドリノベ内企画】路地裏アンアン in 光秀 / 明智光秀
────人目には触れない、秘密の空間
表通りに面していない、路地の入り込んだ所が言わゆる『路地裏』と呼ばれる場所だ。
そこは人通りもあまり無く、目につかないために、俺のような仕事をする人間には最適だ。
つまりは密談、秘密の話し合い。
それをするには、もってこいの場所である。
俺は普段から、そこを多用し、さまざまな秘密裏の話し合いをしてきた。
無論、誰にも内緒で。
だが──……
今回ばかりは上手くいかなかったようだ。
まさかお前が、立ち聞きをしているとはな。
お前にこの世界は似合わない。
だから、少し痛い目をみてもらうぞ?
それは甘い甘い『仕置き』
嫌なら逃げろ、拒んでいい。
だが嫌じゃないなら──……
立ち聞いた話など忘れるくらい、蜜な夢を見させてやろう。
────おいで、美依
「……」
俺の目の前で、小娘がひたすらに押し黙る。
なんだか迷い子のような目をして、唇を一文字に結んで……
俺はそんな美依の様子を見て、小さくため息をついた。
今は少し空気も涼しくなった、初秋。
夏の暑さは過ぎ去り、肌を撫でる風が、少しだけ冷気を帯びて心地よい。
まぁ、そんな季節の移り変わりも、俺には何の興味も引かないのだが。
俺はいつも通りに仕事をこなし。
そして、いつも通りに小娘をからかうだけの日常だ。
(……だが、それも今日は少し違ったな)
俺は今日も、路地裏にあるいつもの茶店で、ある謀反人との密談をしていた。
織田の傘下に入ったばかりなのに、どうやら裏で敵と手を結び、信長様を狙う計画を立てているらしいと。
俺はその情報を聞きつけ、手を回し……
上手くそいつらに取り入って、信用させる事に成功した。
そして今日、奇襲を掛ける計画を持ち寄った。
当然ながら、捕まえるための罠である。
だが──……
その話を、運良くと言うか運悪くと言うか、美依に立ち聞かれてしまったのだ。
それを問い詰めようと、こうして路地裏の人気のない所で美依と向き合っているが……
美依は何も語ろうとはせず、黙秘したままだ。
一体何を考えているのか……
俺は壁際に美依を追い込んだまま、何度目かの同じ台詞を吐いた。