第1章 1
本当は入っちゃいけない川原に入って、君と二人きりで見上げる尺玉の菊花火はなんだか七色に光ってるみたいだ。
見上げる君の目は光に照らされて七色に光って、妖精みたいだ。
まだ少し残ったりんご飴はやたらと甘くて、きっと青いのなんか頼んじゃったせいだ、赤いのにしておけばよかった、君とお揃いの。
そんなこと思いながらキスをした。
君の口も甘い。
帰り道、照れて無口な君にまた笑って欲しいって思っていろんなことむちゃくちゃに話してたら、君は僕の口の中急に覗き込んだ。
口は開けててなんて真剣な顔して言うもんだから、言うなりになってたら、
葵君の口の中真っ青、なんてくすくす笑うんだ。
僕はあてが外れたようで、でも君が笑ってくれたことがとにかく嬉しくて、べえって舌を出して君を追っかけまわして、君はきゃあきゃあ言いながら逃げ回って、
急に振り向いて、
「私の口もあおい?」
青くしてやるー、って、もう一度キスをした。
帰り道、二人乗りの自転車の後ろ、
走り回ってセットの少し崩れた君の長い髪が、夜空になびいた。