第47章 悪夢、再び
ー3月末のとある休日ー
クレアは休日の早朝だというのに兵服に着替えて兵舎裏に来ていた。
「えっと……」
クレアはずっと記録をしていたカマキリの卵を探す。
3月に入るとまだ寒さは残るものの降雪は殆どなくなり、心なしか厳しい寒さも和らいでる感じもしてきた。
そのため、カマキリの孵化も早まるのではないかと予測されたため、クレアはいつもより早く起きて卵の観察をするのが、この所の日課となっていたのだ。
それは休日とて例外ではない。
「あ!!あぁ!!」
ハンジのカマキリ予報が今年も見事に的中したのか、積雪は少なく、昨年より低い位置に産み付けられたカマキリの卵は雪に埋もれることなく孵化を始めていた。
「やった!卵が孵ってる!!」
第一発見者であるクレアはこの喜ばしい事態に歓喜の声を上げると、一目散にハンジの元まで走って行った。
「ハンジさん!!ハンジさん!ハンジさぁぁぁーん!!!」
執務室に向かったが、カギがかかっている。
まだ寝ているのだろうか。
回れ右をして今度はハンジの自室へ向かう。
「ハンジさん!クレアです!起きてくださーい!!」
ドンドンと扉を叩くが中からの返事はない。
昨夜も遅くまで本を読んでいたのだろうか。
普段なら時間を置いてから出直す所だったが、興奮している今のクレアにはそんな気遣いをする余裕はなかった。
しかし、ダメもとでドアノブを回すと、その扉はカチャリと音を立ててすんなりと開いてくれた。
おそらく昨夜カギをかけ忘れたのだろう。
しかし、クレアにとっては好都合。
これ幸いと勢いよく入室すると、ハンジは兵服のままベッドで寝息を立てていた。
過去に2回程ハンジの寝起きに遭遇した事があったが、小さく名前を呼ぶだけで勢いよく起きてくれたハンジが今は扉を開く音にも気づかず眠っている。
もしかしたら眠ったばかりなのだろうか。
「こんな時に限ってなんで起きないんですか〜…」
だが、そんな状況がかえって焦れったい。
痺れを切らしたクレアは、何を思ったのか少し後ろに下がり、助走をつけるかの様に小走りをすると、思いっきりハンジのベッドめがけてダイブをした。