第46章 巣立つ想いと、残る想い
しばし上機嫌に飲んでいたハンジだったが、ソファに深くもたれかかり、脚を組み直すと鋭い質問をモブリットに投げかけた。
「何か悩みか?モブリット。」
「……?!」
さっきまでヘラヘラとホロ酔いで楽しそうに話してたかと思ってたら、ハンジは急に真面目な顔になりモブリットに問いかけたのだ。
まさかの展開に今度狼狽えたのはモブリットの方だった。
モブリットがこんな時間に訪ねてくるなど、思っても見なかったことだ。
自分が一瞬戸惑った考えが杞憂だったとしても、モブリットはなんの意味もなくこの空間に1人でやってくるような男ではない。
それは今までの彼の行動が証明している。
だこらこそ、何か深い話があるのかと思ったのだが、話のネタはなんてことないただの世間話だ。
たとえここにクレアがいたって、リヴァイがいたって、エルヴィンがいたってできる話だ。
それを何故わざわざ今ここでする必要がある?
そう考えればおのずと出てくる答え。
至ってシンプルだ。
モブリットは何かを抱えてやってきたのだ。
しかも、その内容を自分に悟られぬ様に、うまくごまかしながら自分自身で答えを見つけようとしている。
まだ燃料切れを起こす前のハンジの思考は、酒を飲んでいても変わらずに鋭かった。
そして、モブリットが自分に悟られたくないモノ。
それは多分自身に向けた慕情だろう。
ずっと気づかぬフリをしてきたモブリットの想いだ。
それに決着をつけに来たとなれば考えられる事はおそらく2つ。
玉砕覚悟で想いの丈をぶつけに来るか、もしくはそういった感情を手放しにきたか…
そのどちらかだろうと推測される。
でも自分の側で、誰よりも自分の事を理解してきてくれた男だ。今後の関係にヒビが入りそうな前者は考えにくい…
となると、可能性が高いのは後者か……
ハンジは真面目な顔を崩さずに、また一口豪快に煽るとモブリットの目を見つめたまま考える。