第45章 プレゼントは奇行種
その香りは、リヴァイが愛してやまないクレアの愛用している香りだ。
出会った頃はこのキンモクセイの香りにグイグイと背中を押され、形の見えない何かに急かされる様な、なんとももどかしい気持ちにさせられたが、想いが通じ合い、愛しい相手の香りとなったこのキンモクセイは、気づけばリヴァイの精神安定剤の様になっていた。
リヴァイはほどいた髪を愛しく撫でるように指先で梳かすと、そのまま後ろから抱きしめて自身も横になる。
そして布団を首までかけて冷えない様にしてやった。
「……本当に朝まで起きないつもりだな。」
頬を撫でても、髪をといても、抱きしめても身じろぎ1つしないクレアにフッと笑みを溢すリヴァイ。
誕生日のプレゼントとして貰ったクレアとの時間。本音を言えばまだまだ激しく繋がっていたかったが、リヴァイはこれでもよかった。
気を失っていなければ、クレアはフラフラになりながらもシャワーを浴びに行っただろう。
そうなってはこのキンモクセイの香りはほとんど流れていってしまう。
クレアを抱きしめて眠る時はこの香りが共になければ落ち着かない。
そう思っていたリヴァイは、絶頂と同時に気を失ってしまった展開にそこまで不満はなかった。
いや、むしろ好都合だったと言えるかもしれない。
「クレア…ありがとな……」
昨年の誕生日は刺激的すぎるプレゼントを貰ったが、今年の誕生日も中々に自分を振り回してくれた。
きっと自分はこの命尽きるまで、クレアに振り回され続けるのだろう。
でもまぁ、好きになってしまったのだから仕方ない。
今年もお互いに生きて誕生日という聖なる日を過ごす事ができたのだ。
調査兵として、決して“当たり前ではない”特別な喜びにひたると、リヴァイは愛しいクレアをキンモクセイの香りごと抱きしめながら眠りについた。