第43章 姉妹の絆
「ありがとうございます、エルドさん。私にはもう身内がいなくなってしまったので……いざとなった時に頼れる人がいるというのは、とても心強いです。」
申し出を快諾してくれた事にエルドは安堵の表情を浮かべた。
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それぞれの想いを伝え、そしてマリアの想いも受けとる事ができた3人は、その後孤児院で昼食をもてなしてもらってから帰路につくことになった。
「寮母さん、食事まで世話になってしまい…すみませんでした。」
「いいえ、とんでもございません。本日は遠い所ありがとうございました…」
ミケが寮母に礼を言うと、寮母も頭を下げ、それにつられる様にマリアも頭を下げた。
食事の際にクレアが調査兵団への訪問をどうするか聞いたのだが、マリアは今一度訓練兵団へ進むかどうかじっくり考え直したいと、今回の調査兵団への訪問はひとまず無しになった様だ。
「あの…今日はお姉ちゃんの事、知らせに来て下さりそうありがとうございました。皆様どうかお身体には気をつけて……」
そこまで言うと両手で顔を覆ってしまったマリア。姉と仲の深かった3人が去ってしまう事に寂しさを覚えたのだろう。
「マリア…泣かないで…」
「クレアお姉ちゃん…エルドさん…ミケさん…本当に…本当にお元気で……」
最後にクレアが3人を代表してマリアを抱きしめると、その身長はわずかにマリアの方が高かった。
「マリアも元気でね…」
溢れ出そうな涙を懸命に堪えて笑顔を見せると、寮母がマリアの肩を抱き、3人を見送ってくれた。
調査兵団の兵舎に戻るべく再び馬を走らせた3人。
とてもとても言葉では言い表せない程の事があった3日間。
親友の死に嘆き、自身に絶望し、それでも這い上がり、そしてまた明日から訓練は再開される。
泣いてる暇も止まっている暇も調査兵には無いのだ。
心地良い秋風は追い風だった。
クレアはその追い風に背中を押されると、また明日からの訓練に向けて気を引き締めなければとグッと手綱を握り直す。
そして、フレイアの意志を引き継ぎ、自分は戦い続けるのだと、改めてこの美しく広がる青空にクレアは誓った。