第41章 奇行種の瞳が映したモノ
ー壁外調査前日ー
壁外調査前日は午前の訓練が終われば後は準備のできた者から自由時間だ。
昼食後、フレイアはエルドの所へ。
リヴァイやハンジは幹部会議で招集がかかっているため、クレアはいつもこの時間を持て余してしまっていた。
馬具の点検も、立体機動装置の点検も済んでしまい、医療道具のチェックも終わってしまった。
香油もまだ瓶に残っているため特に外出にでる必要もない。
となると自然と足を運んでしまう場所は1つ。
「デイジー、ブラシでもかけてあげようか?」
そう、愛馬デイジーのいる厩舎だ。
クレアがブラシを見せてやると頸を上下に振ってデイジーは喜んで見せた。
「フフフ、じゃあおじゃまするわね。」
そう言って、クレアは踏み台を片手に馬柵棒(ませんぼう)をくぐって馬房の中に入ると、デイジーの頸を撫でながら台に登った。
「ピカピカにしてあげるからね!!」
時間はたっぷりあるのだ。
クレアはデイジーに話かけながらゆっくりとブラシをかけ始めた。
「でね、それでね、その時のハンジさんったらすっごくかっこよくてね……」
クレアがデイジーにブラシをかけ始めて、かれこれ小一時間がたとうとしていた。
「それでもハンジさんったらこりなくて……」
延々と止まることなくハンジの話を聞かされ続けるデイジー。
ブラシがけは気持ちいいが、さすがのデイジーもハンジの話ばかり聞かされるのにうんざりとしてくる。
時折耳を伏せてみたり、前掻きをしてみたりと不機嫌オーラを出してみるが、鈍感奇行種クレアはそんなのに気づくことなく喋り続ける。
さすがのデイジーも勘弁してくれと文句の一声を嘶(いなな)こうとしたその時だった。
「あ…あれ?」
「あ、クレアさん…?!」
厩舎にやってきたのはまさかのアンドレだった。