第40章 エルヴィン・スミスの表と裏
本格的に気候が秋めいてきたとある日、クレアはフレイアから声をかけられた。
「ねぇクレア!聞いて!あの話、団長の許可貰えたの!」
「え?本当に?すごいすごい!!」
嬉しそうに話すフレイアに、クレアも思わず嬉しくなってしまう。
フレイアの“あの話”とは孤児院で生活をしているマリアの滞在許可の件だった。
調査兵として立派に戦っている姉の姿を見て、マリアも憧れを持ったのだろう。
先日面会に行った際に、訓練兵団に興味を持ち始めた事と、調査兵団の訓練を見学したいという話をされたと言うのだ。
正直生存率の低い調査兵団になど入って欲しくないのは妹を想う姉として当然の事だが、本人が強く希望するのであれば、それはいくら身内の姉であっても反対するべきではないだろう。
そう判断したフレイアは、マリアの意志を尊重し、団長に数日間の滞在許可と、訓練の見学の許可をもらいに相談に行ったというわけだ。
「団長も、1人でも希望者が増えるのなら大歓迎だって、二つ返事で許可をくれたの。」
「本当によかったね!で、いつくるの?」
「もうすぐ次の壁外調査の日程が決まるらしいの。だから次の壁外調査が終わったら迎えに行ってもいいって。」
「そうなんだ!!私もマリアに会えるの楽しみ!!あっ!でも……次に会う時は身長追い越されてそうで怖い……」
「た、確かに……でもクレアは可愛いいんだから!!気にしない気にしない!!」
「………………うぅ!!」
フレイアが笑い飛ばすようにクレアの背中を思いきり叩くと、クレアは思わず情けないうめき声を上げてしまった。
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──1週間後──
クレアはハンジの執務室での仕事を終えて自室に戻ろうと長い廊下を歩いていると、遠目から人影が見えてきた。
暗いため誰なのかよく分からない。
こんな真夜中に誰だろうか……
クレアが少し身構えながら歩いていると、廊下の窓からさしこむ月明かりが、その人物の姿を照らしてくれた。
「あ……団長……。」
「クレアか??」
遠目から見えた人影はエルヴィンだった。