第39章 嗚呼、我が愛しき分隊長
「はぁ……はぁ……あぁ……」
クレアが肩で息をしていると、リヴァイは手首の拘束をといてやった。
それと同時に倒れるようにうつ伏せになってしまった。
「おい、クレア…燻ってた熱はすっきりしたか?」
リヴァイはもう先程のサディスティックな声色ではなく優しい口調でクレアの乱れた髪の毛を撫でながら顔を覗き込んだ。
「は…はい…お陰様で……」
今のクレアにはこう答えるので精一杯だった。
「あんな事、俺以外の男の前では絶対に言うんじゃないぞ……お前は無自覚奇行種だから気が気じゃねぇ……」
少し呆れたようにリヴァイはクレアの髪を梳きながらキンモクセイの香りを堪能すると、仰向けにして服を整えてやった。
「あ、あんな事、兵長以外には絶対に言いませんから!!大丈夫です。」
「……だといいがな。」
兵服を整え終えると、クレアは少し気怠そうに立ち上がり、ハンジの部屋へ向かおうとした。
時計を見ると、いつも到着している時間より少し過ぎている。
早く向わなければ何かと怪しまれてしまう。
「クレア、待て。」
部屋を出ようとしているクレアを呼びとめると、リヴァイはあるモノを手に握らせた。
「兵長…??え?えぇ?いけませんよ!こんなに。」
リヴァイが握らせたもの。
それはエルヴィン、ミケと同様、高額なお金だった。
「あのクソメガネにくれてやるのは癪に触るが、エルヴィンもミケも出しておいて俺だけださねぇのも情けない話だ。お前の料理の腕は信用しているからコレで美味いものを作ってくれ。間違っても今年は巨人の群れなんか作るなよ!」
「は…はい…承知しております。」
そこまで言われてしまえば受け取ら無い訳にはいかない。
まだちゃんと数えてないが、おそらく合わせると、相当な金額になるだろう。
当初予定していたメニューよりも、もっと豪華な物が作れそうだ。
クレアが少しわくわくしと胸踊らせながら扉をあけると、最後に頬へキスを落としたリヴァイが耳元でとんでもない事を囁いた。