第39章 嗚呼、我が愛しき分隊長
相も変わらず暑い中、調査兵団の兵士達は汗を流しながら訓練に励む日々。
たが、夕刻を過ぎれば少し涼しい風が頬をかすめる様になってきた。
季節は少しずつ秋へと移り変わってきている。
そんな中、夕刻にも関わらず汗を流して走り回る人物が1人。
ハンジ班の奇行種、クレア・トートだ。
「ありがとうございます!!では当日はどうぞ宜しくお願いします!!」
「「「はいよ〜、今年は何を作るのかな?」」」
「ふふふ、それはまだ秘密です!」
クレアはとある場所にいる人物にお礼を言うと、今度は別の場所に向かうべくまた走り出す。
訓練終わりで少し疲労を感じている身体だがそんなのはお構いなしだ。
逆に今のこの状況はクレアをワクワクと高揚させていた。
──コンコン──
「クレア・トートです。今少し宜しいでしょうか?」
「クレアか。入ってくれ。」
「失礼します、団長。」
クレアが向かったのはエルヴィンの執務室だった。
「どうしたクレア。ハンジがまた何かやらかしたか?」
エルヴィンは穏やかな笑顔で迎え入れたが、クレアの来室に密かに心踊らせていた。
「いいえ、実は……」
クレアは敬礼していた腕をおろすと、少し早口に喋りだした。
「団長もご存知だと思うのですが、もうすぐハンジさんのお誕生日です。」
「そういえば、そうだったな…」
「昨年は色々と私がやらかしてしまったのですが……今年は団長や兵長もお誘いして小さなパーティーをしようと思っているんです。なので私、ハンジさんのお誕生日パーティーのご招待に参ったのですが……団長、お誘いしてもよろしいでしょうか?」
クレアはキラキラの笑顔でエルヴィンの顔を覗き込んだ。
ハンジに執心している可愛いクレアからそんなお願いをされてしまえば答えなど決まっている。
「クレアから直々のお誘いなんだ。断る理由などありはしないよ。喜んで招待を受けようではないか。」
エルヴィンの返事にクレアの表情はパァっと夏の太陽の様に明るくなった。