第38章 “キミ”という存在
7月中旬に行われた壁外調査から1ヶ月もたつと、季節は夏本番だ。
多くの仲間を失った新兵達も徐々におちつきを取り戻し、厳しい暑さの中で訓練に励む日々に追われていた。
「クレア!お疲れー!はぁ…疲れたぁ…」
タオル片手に汗を拭きながら声をかけたのはフレイアだ。隣には同じくタオルで顔を拭きながら手をふるリリアンの姿もある。
「あ、フレイア!リリアン!」
「今日も暑かったねぇ……早くお風呂行こう。」
壁外調査では軽症を負い、精神的にも気鬱になってしまっていたリリアンもこの所は調子を取り戻し、元気に訓練に励める程に回復をしていた。
「そうだね!混んでしまう前に行っちゃおう!」
今ではすっかり仲良し3人組として定着したクレア達は急いで風呂の支度をすると、大浴場まで走っていった。
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──その夜──
「クレアー!この間の休み、フレイアの妹の孤児院に面会に行ったんでしょ?どうだった?」
ハンジは精製の傍ら興味のある分厚い化学書を読みながらクレアに話しかける。
「はい、フレイアは時間を作ってマメに面会に行ってるようですが、私は1年ぶりに会ったので大分久しぶりの面会でした。」
クレアは精製されていく媚薬の火加減に注意をしながら受け答えをする。
「1年ぶりか、だいぶ大きくなっていたんじゃないのかい??」
モブリットもハンジに押付けられた書類仕事に目を通しながら声をかけてきた。
「はい……そこなのですが…大分身長も伸びていて…次会う頃には追い越されそうです…」
久しぶりに会ったマリアは少し大人っぽくなっていて、それはそれは自分の方が幼く見えてしまう程の成長ぶりだった。
「ハハハ!そんなに成長していたのか。フレイアも身長高いし、追い越されるのは致し方ないかもな。」
「う……そうなんですよね……」
もう苦笑いでため息をつくことしか出来なかった。