第34章 その数、無制限
──翌朝──
いつもの時間に目が覚めると外は雲ひとつなく、よく晴れそうな天気だった。
「急がなきゃ……」
今日は本来なら訓練日だ。
2人の関係は頑なに秘密というわけではなかったが、他の兵士達に見られるのを避けるため、リヴァイとは、早朝に厩舎で待ち合わせをして出発することにしていた。
早朝のこの時刻でもほんわかと暖かい。この様子だと、今日はとても暖かくなりそうな感じがする。クレアはリヴァイから仕立ててもらっていた服の中から深緑のワンピースをクローゼットから取り出し着替え始める。
少しデコルテラインが見えてしまうが、大きめの襟がついてるためそこまで胸元は気にならないだろう。
髪を梳かしてワンピースとセットになっていたボンネット帽を被り顎の下でリボンを結ぶと準備は完了だ。
こんな時、少しは化粧でもした方がいいのか迷ったが、クレアは化粧品の類を持っていなかった。
仕方ないが、このまま出かけるしかない。
クレアはまとめて置いた荷物を手に取ると、足早に厩舎へ向かって行った。
厩舎へ着くと、リヴァイは既に馬房の中でダスゲニーの馬装を終え、クレアを待っていた。
「あ、兵長!おはようございます。お待たせしました。」
「いや、俺も今来たところ…だ………」
リヴァイは平静を装ったつもりだったが、内心ドクンと胸を高鳴らせていた。
クレアの私服姿を見るのはどれくらいぶりだろうか…兵服8割、部屋着2割が日常だ。
久しぶりに見たクレアの私服姿に思わず目を奪われてしまった。
確かに贈る服はいつもクレアに似合うかどうか、自身の脳内で想像してから選んでいたが、想像と、実際着てみるのとでは大分印象が違った。
クレアは見た目は幼い少女だが、目鼻立ちがはっきりしていて、硝子玉の如く大きくて蒼い瞳は特に印象的だ。変に目立たぬ様にと地味な色合いやデザインの服を選んでいるのだが、何故かどうしても想像以上に美しく仕上がってしまう。