第30章 奇行種、異変
新兵歓迎会が無事に終われば、翌日からは本格的な調査兵団での訓練が始まる。
もちろん座学は無く、対人格闘や筋トレ等の基礎訓練も少ない。その内容は訓練兵時代とはガラリと変わり、立体機動や馬を使った実践向けの訓練が殆どだ。
皆それぞれに過酷な訓練を3年間乗り切ってきた若き兵士達であるが、やはり調査兵団での本格的な訓練は相当キツいのだろう。
夕刻になると、どの新兵も疲労の色が隠せないようだった。
そんな中、今年も一際注目を浴びてしまっている人物が1人。
そう、ハンジ班の奇行種、クレアだ。
「クレアさん!!俺!俺!アンドレ・シュナイダー!どうやったらあんなに速く飛べるんすか?」
「クレアさん!僕はフェリックス・ベッカーです!もう予備馬の調教で死にそうなんですけど……どうしたら……」
「私はメグ・ジェイカーといいます!クレアさん!どんな石鹸使ってるんですか?!」
「え?!え?ちょっ!ちょっと待って!!」
クレアが通れば新兵はみな駆け寄り話しかけてきた。
調査兵団での有名人といえば、有無をいわさず団長であるエルヴィンに人類最強と呼ばれているリヴァイだ。
しかし、実際に入団をして訓練が始まると、自分達新兵よりはるかに年下に見える女兵士が人間技とは思えない速さで目の前をビュンビュンと飛び回り消えいく。
すぐにクレアの存在は合同訓練をした新兵たちの間で噂になっていった。
それが昨年訓練兵団を主席で卒業した優秀な兵士だと分かると、皆興味津々にクレアを質問攻めにし始めたのだ。
年が上すぎるエルヴィンやいつも不機嫌そうなオーラを出しているリヴァイではまだ話しかけるのはハードルが高いのだろう。
年が近い上にビスクドール顔負けの美しい容姿を持つクレアは、主に男新兵の注目の的だった。
「ちょっと待ってね!順番に答えるから…!」
昨年は年上のベテラン兵士の注目の的になり質問攻めにあったが、あろうことか今年は新兵からの注目の的になってしまった。
クレアは熱心に質問をしてくる新兵を無下にもできず、1つ1つ丁寧に答えてやったいたが…。
それを快く思わない人物が1人。
そう、人類最強リヴァイ兵士長だ。