第29章 103期入団とハンジ班の奇行種
──4月某日──
今日は3年の訓練を終えた103期の新兵が入団してくる日だ。
朝から兵団内はバタバタと、新兵を受け入れる準備で賑わっていた。
しかし、一際興奮し狂喜乱舞している人物が1人……
──バターン!!──
盛大な音を立ててエルヴィンの執務室の扉が開く。
「おぉーーーーい!!エルヴィーン!!」
ノックも無しに勢いよく開く扉にエルヴィンは驚いた表情を向けた。
「……どうしたハンジ?そんなに慌てて?」
「うるせーよクソメガネ。」
「あっ!リヴァイもいる!ちょうどいい!ちょっと2人とも聞いてよ!!いや!見てよ!いーや!聞いて!あぁ!やっぱり見てぇーーー!」
頭をグシャグシャと掻きむしりもう何をしたいのかさっぱり分からない。
「ハンジさーん…はぁ…はぁ…もう、速すぎます!追いつけない…」
「分隊長…とりあえず…落ち着きましょう!」
数秒遅れてクレアとモブリットが息を上げて入室してきた。
「おい、クレア…これはいったいどういう状況だ。」
「団長…兵長…おはようございます!あの、ちょっとお話が。」
「話だと?!」
「ハンジ、話とはいったいなんだ?」
するとハンジは鼻息を一層荒くし、右手をバンッと机につくと、得意満面に話し出した。
「ねぇ!冬にカマキリの卵の話をしたでしょ?!ずっと経過を見てたんだけど、あの卵たち、ついに雪に埋もれることなく見事に孵ったんだ!!どう?これで私の話、信用する気になったかい?」
ハンジは調査報告書をエルヴィンの胸に押し当てるように提出をする。
エルヴィンはパラパラと目を通すと、なかなかの興味深い報告書だった。
しかし…
「そうか。確かに興味深い結果になったな。引き続き次の…」
次の冬も調査をお願いしよう。
エルヴィンがそう言おうとした時だった。
「でしょ?!でしょ?!めっちゃ滾る結果になったでしょー?!とにかくコレ見てよ!!」
ハンジは小脇に抱えていた箱をエルヴィンの机の上にドーンと置くと、勢いよく蓋に手をかける。
「ハンジさん!!」 「分隊長!!!」
両腕を前に出し、ハンジの動きを制止しようとした2人であったが、時すでに遅し。
──パカーン!──
禁断の箱は狂喜乱舞したハンジの手によってあっけなく開けられてしまった。