第22章 リヴァイ、悔いなき選択 奇行種、困惑
──12月某日──
今日は年内最後の壁外調査だった。
年を越して本格的な冬季に入ると、壁外調査が実施できるかできないかはその年の積雪量で大きく変わってしまう。
積雪が少なく、馬の脚に問題が出なければ実施されるが、積雪で脚場が悪くなれば馬を走らせることが出来ないため、雪が溶けるまで実施は見送られる。
前回の壁外調査での大規模な被害、当然年内の実施は困難かと思われたが、ハンジの一言で事態は急転した。
「いや〜、去年偶然発見したんだけどさぁ、カマキリの卵って雪に埋もれることなく春に孵るんだよね。それって不思議だと思わない?もしかしてカマキリの母親って、その年の積雪量が分かるんじゃない?」
「……………………。」
幹部会議でまさかの爆弾発言をし、そこにいた全員が絶句をした。
「おい、クソメガネ。それじゃあカマキリの卵に来年の天気予報をさせるのか?なんの根拠もなしに!ふざけるなよ…」
「まぁまぁ、リヴァイ!確かに根拠はないんだけど、去年の卵は無事に孵ってるんだ。しかも、私がこの間偶然見つけた卵、いくつか発見したんだけど、去年より高い位置に産み付けられてたんだ。…興味深くない?」
「チッ……」
当然こんな事で、壁外調査の許可などおりるわけがないとハンジ以外の全員が思っていたが、エルヴィンがどう話をつけてきたのかは知らないが、今回のみ特別に壁外調査の許可がおりたのだ。
ハンジの予想がピタリと当れば雪が溶けるまで壁外調査は実施できないのだ。
かといって大規模な被害がでた後だ。
今回の壁外調査の内容はルートの延長と新たな拠点候補の確認にとどまった。
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壁外調査の日程は先週急に知らせが入った。
今年の積雪量は多いと予想したハンジの意見が通ったようだ。
急ではあったが、クレアのやる事は明確だ。
目の前の巨人を討伐し、1人でも多くの命を救って帰ってくること。
今一度自分に言い聞かせ、きっちりと髪の毛を編み込んだ。くるくると巻いて団子状にまとめた時、ふと思った。
香油屋夫婦から貰った、固形の香油のことだ。
これは風呂に入ってもしばらく香りが残ると言っていた。
クレアはそれを手に取りしばし考える。