第21章 奇行種、疾走、驚愕、誘導尋問
小走りで自室まで向かっていたが、休日にもかかわらず兵舎内は割と静かだった。
この悪天候で部屋で過ごす者が多いのだろうか?
クレアは静かな廊下を、急ぎ足で走っていった。
フレイアは部屋にいるだろうか。
何の連絡も無しに昨日の夜からずっと戻っていないため、心配をかけていなければよいのだけど……
そう思ってドアノブに手をかけたところだった。
指の先にゾクリとした感覚が走り、クレアは一瞬動けなくなった。いったいどうしたのだろうか。
何故だがこれ以上手が動かない。
何故だが部屋には入ってはいけない気がする。
そう思った時だった。
「(…あぁ………あぁん、…エルド…さん…)」
「(……フレイア……)」
「……………!!!」
とっさに手のひらを口にあて、なんとか大声で驚くのを自分自身で阻止をした。
「う、嘘でしょ…」
この扉1枚挟んだ向こう側では今まさに友人のフレイアと先輩兵士のエルドが男女の睦み合いの真っ最中であった。
この雨だ。きっとどこにもでかけることができず、だからといってエルドの部屋には同室の兵士がいたため、仕方なくこの部屋で2人過ごしているうちに自然の流れでこうなったのだろう。
別にそれはかまわないのだがそれでは自分はどうしたら良いのだ、ここで突っ立っていて誰かに話しかけられるのはまずい。
中の様子がバレてしまっては大変だ。
先に風呂を済ませたくても、風呂道具も着替えも自室の中だ。
だからといって、なんとなく今はハンジの執務室には行ってはいけないと本能が叫んでいる。
十中八九逃れる事ができないのはわかっているが、昨日の事を根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。
できる事なら1日でも長く先延ばしにしたい。
そうなると選択肢は1つ。
いまきた道を全速力で走り抜くことだった。
クレアは回れ右をすると、両手で耳を塞ぎながらリヴァイの自室まで走りだす。2人の声を聞いたのはわずかな一瞬であったというのに、何故だが頭から離れてくれない。扉1枚に隔たれて見えなかったのが逆に影響しているのか、まさかの2人の睦み合いを想像してしまいそうな事態になってしまい、どこかに頭を打ちつけたくなってしまった。