第20章 愛しい奇行種
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朝だろうか……
目が覚めた様な感覚だが、半分はまだ夢の中。
まどろみの中でリヴァイは何かを抱きしめていた。
うっすら目をあければまわりはオレンジ色の小さな花びらが舞い、右も左もオレンジ一色。
息をすれば自然と香ってくるキンモクセイの香り。
なんだか以前にもこんな事があったような……
自分の腕の中にある温かい存在がとても愛おしく、逃げないように、でも壊れることの無いように、力を入れて抱きしめる。
いつまででもこうしていたいと思った。
──ザァァァァァァァァァァ──
「…………。」
うるさい雨音と雷鳴でリヴァイは目をあけた。
まだ降ってたのか……
雨音で完全に目を覚ますと、リヴァイは腕の中にいる小さな存在に目をやる。
毎日早起きをしているはずのクレアが起きないとは、余程昨夜の情事が堪えたのだろう。まだ深く眠っているのか、規則正しく寝息をたてていた。
サイドテーブルに置いてある時計を見ると、間もなく7時をまわろうとしている。
リヴァイも、いつもの起床時間からすると少し寝過ごしていた。
こんなにぐっすりと眠ったのはいつぶりだろうか…
リヴァイは地下街で育った為か、異常に眠りが浅い。
いつ寝首をかかれるか分からない生活をしていたのだから仕方ないが、調査兵団に入ってからも、その睡眠サイクルは変わらなかった。
クレアが側にいるからだろうか……
リヴァイはクレアを抱きしめたままま考える。
以前、クレアの部屋が分からず連れてきた時も、無意識のうちに抱きしめ、熟睡していたことを思い出した。
また同じ夢を見たな……
クレアの姿は見えなかったが、腕に抱いていたのはまぎれもなくクレアだった。
明るく暖かで、キンモクセイの香る心地の良い夢。
もう少し夢の中にいたかったが仕方ない。
リヴァイは後ろから抱きしめたままクレアの頬にキスをする。
やっと想いを繋げることができた、やっと身体を重ねることができた。
女を好きになった事などなかったリヴァイは、胸の内からとめどなく溢れ出す愛しさという感情に、酔いしれるように身を任せてみた。
これが幸せという感覚なのだろうか…