第19章 大雨と雷鳴とハンジ班の奇行種
ザァァァァァァァァァァァ!!!
走り出して間もなく、雨は土砂降りに変わってしまっていた。遠くでは雷が鳴り始めている。
あのクソメガネ!!何がいい天気だ、ふざけた事言いやがって!嵐じゃねぇかよ!
盛大に舌打ちをしながら全速力で走っていたが、リヴァイは大事な事を思い出した。
クレアの怪我の事だ。明後日から訓練再開の許可が出たとはいえ、治ったばかりだ。
遠回りをしていたせいで、まだ兵舎までは距離がある。こんな長距離を急いで走らせるのは絶対に良くない。
「すまない……怪我は痛まないか?」
「え?えっと…大丈夫です。ご心配おかけしてすみません…」
リヴァイは一旦止まると、すぐ後ろを着いてきていたクレアの左手を握って、転ばぬよう少しスピードを落として走り出した。
「兵長……」
右手を引かなかったのは、治ったばかりの怪我が再び痛まぬよう気をまわしてくれたのだろうか。
その優しさに、冷たい雨が当たっているはずの身体が、どんどん熱くなるようなおかしな感覚がクレアを襲った。
全身が雨でびしょ濡れになりながらも走り続けると、ようやく兵門が見えてきた。
リヴァイもクレアも、靴の中までビショビショだ。
頭からつま先までずぶ濡れで、こんな状況普通なら、一刻も早く兵舎に戻りたいはずだ。
そう……普通なら………
しかし、冷たい雨を浴びながらも兵門までたどり着いた所で、2人は同時にピタリと足を止めた。
どちらからでもない。
2人で同時に足を止めたのだ。
そのことにお互いが驚くと、リヴァイは振り返り、クレアはリヴァイの顔を見上げ、無言で見つめ合う。
リヴァイは、次のデートの誘いができていなかったこともあるが、どうしてもこのままクレアを部屋に返したくなかったため、足を止めた。
でも何故クレアも足を止めたのだ。
それを聞きたかったが、クレアの顔を見れば、何か言いたげに大きな蒼い瞳を揺らしこちらを見つめていた。
やっと兵門が見えてきたが、クレアはまだリヴァイに伝えていないことがある。
色々なことがあってやっと自分の気持ちを伝えようと思えたのだ。
どうしても、このまま部屋に帰りたくはないと思ってしまい、足を止めたが、何故だかリヴァイも足を止めた。