第15章 リヴァイの奇行種攻略作戦
嫌な予感しかしなかった2人が扉の方を見ると、そこにいたのは息を上げたペトラであった。
「ノックも無しに申し訳ありません!兵長あの!」
様子から察するに何かあったようだ。
「どうしたペトラ。」
「オルオの馬が……ラヴィーネが疝痛(せんつう)を起こしました!」
「なんだと?!」
「!?」
疝痛とは腹痛のことである。オルオの馬、ラヴィーネは馬房の柵を噛む癖があったので、腹に余計なガスがたまり、まさかのこのタイミングで腹痛を起こしたようだ。
「チッ、なんてタイミングだよ…はぁ…ペトラは調馬索運動の準備をしとけ、俺が行くまではオルオに曳(ひ)き馬をさせてろ!蹴飛ばしても立てない様ならそのままでいい。」
「はい!失礼します!」
ペトラは敬礼をすると大急ぎで走っていってしまった。
シンと静まり返る執務室。
しばし見つめ合うリヴァイとクレア。
なんの運命の悪戯か、ついにお互いすれ違ったまま壁外調査に出ることになってしまった。
「…兵長、あの、ここは私が片付けてカギをかけておきますので、早くラヴィーネのところへ行ってあげてください……」
クレアはリヴァイを直視できず、伏し目で目をそらしながら声をかける。
「……あぁ、すまない……頼んだ。」
カツカツと早歩きで出ていこうとしたが、リヴァイは扉の前で一度振り返り、クレアの方を見た。
止まった足音に顔を上げると、リヴァイと目が合う。
心なしか悔しそうな表情に見えるのは気のせいであろうか…
「絶対に……死ぬんじゃねぇぞ……」
リヴァイはクレアの返事を聞かずに出ていってしまった。
「兵長……」
思い返せばここ1週間、まともにリヴァイと会話をしていない。さらには自分の身勝手な勘違いで気まずい仲になってしまったままだ。
このままなんて絶対に嫌だ……
クレアは執務室の片付けを済ませると、壁にかかっている鏡に顔をうつし、その姿と向き合った。
そして、何が何でも死ぬ訳にはいかないと、自分自身を奮い立たせるように両頬をパチンと叩くと、クレアも執務室を後にした。