第14章 奇行種の妙案
壁外調査後の幹部の多忙期がやっと終わり、通常の訓練に戻ってから半月もたつも、カレンダーは9月になっていた。
9月に入ると、昼間はまだまだ暑いが、夕方から夜にかけては少しずつ涼しくなってきて、季節の移り変わりを感じさせてくれる。
そんなある日の休日。
リヴァイの執務室で仕事を手伝い、朝食を済ませたクレアは自室でフレイアとゆっくりとした休日の朝を過ごしていた。
フレイアはこの後エルドと出かけるようで、念入りに身支度をしている。
「ねぇクレア、壁外調査の時、キレイに髪まとめてたけど、私の髪でも何かおしゃれにできる?」
「フレイアが気にいるか自信ないけど…編み込みとかならできるよ。」
恋に恋しているフレイアは、少しでもキレイにしてエルドを驚かせたいのだろう。そんな姿がかわいくて、クレアはフレイアの頭の両サイドに編み込みをいれて、いつもとは違った耳のでるヘアスタイルにイメチェンしてみせた。
「すごい!髪の短い私でもだいぶ印象変わるんだね!ありがとうクレア!」
鏡を見ながら髪型を確認する姿がなんとも乙女チックだ。そんなフレイアと和んでいると、2人の部屋の扉を誰かがノックをした。
──コンコン──
休日の朝に誰だろう。
クレアはそっと扉をあけた。
「クレア、休日の朝にすまない。ちょっと相談が…」
そこにいたのはモブリットだった。
「モブリットさん?ど、どうされましたか?」
モブリットがクレアの部屋に訪ねて来るのも驚きだが、ハンジにではなく、クレアに相談があると言っている。いったい何事であろうか?
「と、とにかく立ち話はなんですので、中に入って下さい。」
クレアは部屋に通して椅子をだすと、自身は2段ベッドの下に腰掛けた。
「フレイアもこんな時間にすまなかった。聞かれて困る話ではないので気は遣わないでくれ。」
席を外そうとしていたフレイアはホッとしたようにクレアの隣に座った。
「で、モブリットさんどうしたんですか?」
「実は明日、分隊長の誕生日なんだ。」
「えぇ?知らなかったです!どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか?」
敬愛するハンジの誕生日。
知っていたなら何故もっと早く教えてくれなかったのだ。クレアは身を乗り出し思わず文句を言ってしまった。