第12章 奇行種の休日
ある程度の仕事を終えると、クレアは朝食に向かうため、出ていった。
リヴァイはソファで1人クレアから貰ったハンカチを手に取り見つめている。
言われた通り、安いハンカチだ。
しかも、自由の翼の紋章入りなんて、少しダサい感じがして一瞬ギョッとしたが、クレアが刺繍をしたとなれば話は別だ。
自分のために一針一針縫ったのかと思うと、愛しさが込み上げてくる。
本当なら今すぐにでも自分のものにしたい。
しかしリヴァイもハンジやエルド達と同様に、クレアのことを大鈍感女だと重々理解していた。
気持ちを伝えるにしてもストレートに言わなくてはダメだ。
だが、ストレートに「好きだ」と言ったところで、あの奇行種のこと。
「私、兵長もハンジさんも大好きですよ。」
などと言い出しかねない。
救いようのない鈍感でも、特別に好きだと思っていることを理解させなければならないとなると、一筋縄ではいかないだろう…
特にリヴァイは今まで女に好きだと言ったことなどないのだ。
初めて想いを伝えようと決心した女が一筋縄ではいかない鈍感女となると、さすがのリヴァイも慎重にならざるを得ない。
「クソッ……奇行種のやろう…こっちの気も知らねぇで……」
リヴァイはクレアから貰ったハンカチをきれいにたたみ直して内ポケットに入れると、ため息をつきながら、仕事を再開させた。
一方クレアは食堂に向かう途中、リヴァイとは正反対に少し高揚していた。
エルドと付き合ってるなどと勘違いされた時はどうなるかと思ったが、あの時のお礼の気持ちはきちんと伝えられた。
初めての片想いをしているクレアにしてみたら、まずは一歩前進だ。
いつかは気持ちを伝えてみたいと思ってはいるが、あのリヴァイのことだ。
奇行種の私が好きだと言っても「寝言は寝て言え」と言われてしまうだろう。
リヴァイの好きな女のタイプなども気になるが、恋人も長年いないと聞いている。
誰に聞いてもきっとわからないだろう。
前途多難ではあるが、自分の贈ったハンカチを気に入ったと受け取ってくれたのだ。
それだけでも、じゅうぶん有意義な休日になったとクレアは満足し、食堂まで急いだ。