第81章 番外編・厳しい現実と深まる友情
ー3月ー
凍てつくような厳しい寒さが少し和らいできてもいい頃なのたが、今年の3月は例年より気温が低く寒い。
そんな春が待ち遠しい今日この頃、クレアは手際よくいつものルーティーンをこなしていたが、珍しくそこまで忙しくなかったのか、だいぶ早目に終わってしまっていた。
昼休みまでもう少しある。
クレアは、普段忙しくて中々手の回らない場所の整理整頓でもしておこうかと、ぐるりと医務室を見渡してみると…
「ん〜と……あっ…!!」
薬棚の横に少し埃を被った木箱が2つ仲良く並んでいる。
よくよく考えるとあの箱はだいぶ前から…というかクレアが医務室で働き出す前からあったような気がする。
「先生…?コレって…何ですか?」
「ん…?さて…何だったかな?」
声をかけると、カルテ整理をしていた医師が顔を上げてクレアの指差す方を見た。
しかし、長年ここの医務室で勤務している本人ですらわからないようだ。
首を傾げてポリポリと頬を掻いている。
「…あけてみますね?」
埃をかぶってるあたり、いつも使う消耗品ではない事は確かだ。
すぐに使う物でないのなら倉庫にしまった方が部屋は広くなる。
そう思ったクレアは木箱の蓋に手を伸ばして早速あけてみた。
フワッと埃が舞ったが、両手をヒラヒラと振って散らせると、木箱の中はなんだかゴチャゴチャしている。
「コレは…包帯…?でしょうか?」
中から出てきたのは落としきれなかった血のシミが付いた包帯だ。
巻かれてはおらず、無造作に詰め込まれているため、整頓するのは骨が折れそうだ。
「先生…?この包帯って…何ですか?」
「あぁ!!そういえばすっかり忘れておった!」
医師は箱の中身をみると自身の額をパチンと叩いてため息をついた。