第74章 選択と衝突と決断
「……………」
クレアはハンジの左目の下をグッと親指で下げて、その中を見ようとしたのだが、目が霞んでよく見えない。
何度も瞬きをしながらなんとか確認をすると、幸いレンズや瓦礫などは残っていない様に見えた。
おそらく流血で細かなゴミなどは全て流れてしまったのだろう。血が流れ出る事は決していい事ではないが、医療道具が揃っていない今ここでは、不幸中の幸いといえるだろう。
クレアは刃で切り裂いた布でハンジの目を覆うように巻きつけていった。
「お待たせしました。さすがに目の中にアルコールをかけるわけにはいかないので…布で保護するのが精一杯の処置です…申し訳ございません…」
「いいや、十分だ…もうクレアはここに座ってて…」
「はい…」
立ち上がる気力がなかったクレアは、素直に言う事を聞くしかなさそうだ。
ミカサの手当がまだだったが、腕に少し血が滲んでいる程度でそこまで深いものではなかった。
ミカサの戦力は大きい。
クレアはミカサのケガが軽症なのを確認すると、少しホッとした。
ここにいた全員のケガの処置が終わると、ハンジは先程の話の続きをするために改めてライナーに問いかける。
「ライナー、君の左胸に入っていた鉄のケースは何だい?自決用の薬?それとも爆弾か?」
自決用の薬ならいいが、爆弾の起爆装置などであったら安易に開けるのは危険だ。
しかし、ライナーは意外にも素直に答える。
「……てがみ。」
「手紙?…何の手紙?」
「ユミルの…手紙だ…クリスタに…必ず…渡して欲しい…」