第74章 選択と衝突と決断

「ごめんなさいハンジさん…本当は自分でやりたいんですけど…うつ伏せのこの状態ではできなくて…ハンジさんしか頼める人がいません。なので…お願いします…！」





クレアの目は真剣だ。

この瓦礫は自分では動かせない。

置いていけないのならクレアの言う通り、切るしかない…

頭ではわかっているが、ハンジはどうしてもこのままクレアの足を切る事なんてできなかった。




「そ、そうだ…！！」




しかし、ある事を思い出したハンジはクレアに問いかける。





「ね、ねぇクレア？クレアはエルヴィンと先生から特別に“安楽死用”の麻酔薬を渡されてるよね？壁外に出るときは荷物ではなくて、クレア自身で持ってるんでしょ？その麻酔薬…量を調節して使う事はできないの？いくらなんでも麻酔も無しに足を切るなんてできないよ…」




「あ…確かに…持っています…」




ハンジの言う通りで、クレアが持っている麻酔薬は、量さえ間違えなければ通常の麻酔としても使える。

クレアとて、わざわざ痛い方を選ぶ程馬鹿ではない。

その存在を思い出したクレアは、早速打ってもらおうとしたのだが…

それが不可能だという事に気付くと、申し訳なさそうにハンジに真実を告げた。




「申し訳ありませんハンジさん…この通りで…使い物になりませんでした…」




「そ、そんなぁ……」




クレアは薬の瓶をジャケットの胸ポケットに入れていたのだが、地面に叩きつけられた衝撃で割れてしまったのだろう。



ジャケットの左胸を中心に丸く濡れていた。



そうなると残された選択肢は1つ。



このままハンジがクレアの足を切る事だ。