第74章 選択と衝突と決断
「モブリットはきっと…私達だけでも助けようとして…あんな事を…したんだ…」
「ハンジさん…」
ハンジはそう言ってうつむくと、両手の拳にこれでもかという程力を入れて握っていた。
今までずっと…
それこそ朝から晩までずっとハンジの側にいたモブリット。
ハンジは自身の部屋のカギを預けてしまえるほどにモブリットを信用し、また信頼していた。
馬車馬の様に働かせていたのに1度だって異動願いを出さなかったモブリット。
慕情を寄せているのを知っていて、気づかぬフリをしていたのにも関わらず、ずっとかわらぬ態度で接してくれた。
モブリットがいなくなる事なんて考えられなかったハンジだが、現実は実に残酷だ。
「もう…どうしてさっ!!」
モブリットはベルトルトの爆風に巻き込まれて死んだ。
それも…自分と、クレアを庇って。
「モブリットさん……」
クレアだって悔しい気持ちは同じだ。
入団してからずっと世話になってきたモブリット。
ハンジの誕生日プレゼントを選びに一緒に出かけたり、サプライズの作戦をたてたり、影で力になってくれたりと…
クレアにとってもモブリットの存在は大きかった。
悔しくて悔しくて…悲しい…
だが、ハンジの方がずっと長い時間共に過ごしてきたのだ。
その心の傷の深さははかりしれない。
悔しそうに歯を食いしばるハンジの姿を見て、クレアはなんて声をかければいいのかわからなかった。
しかし、時間も状況も、2人に味方などしてくれなかった。
「あ…あぁ…ハンジさん……」
舞い上がっていた砂埃が風に流されて視界がクリアになると、遠目から見えてきた光景にクレアは驚愕する。