第71章 ウォール・マリア奪還作戦
時間の流れも忘れて、朝方まで激しく抱き合っていた2人が目を覚ましたのは正午を回る頃だった。
午後イチで集合だったため、クレアはリヴァイのシャワー室を借りて急いで身体を洗うと、食堂で昼食をかきこんで自室に戻ってきた。
「時間がない…!急いで着替えなきゃ!!」
昨夜の激しくも甘い一時を思い出し、うっとりとする時間はもうない。
脱いだ部屋着を乱雑にベッドに放り投げて兵服に着替えると、今度は鏡に向かって髪を梳かす。
壁外調査の時のように長い髪の毛を編み込んで1つにまとめると、引き出しをあけて香油を手に取る。
しかし、蓋をあけてみるとある事に気づいた。
「あ…もう最後だわ……」
香油屋夫妻から好意でもらった固形の香油。
いつも使っている物と香りは一緒だが、固形のタイプは濡れても数日間香りがもつ。
そのため“生きて帰還できるように”と、壁外調査の時には願掛けのように使っていた。
現に、壁外で行方不明になった時、リヴァイはこの香りのおかげで見つける事ができたと言っていた。
リヴァイと想いを繋げる事ができたのも、あの時生きて帰還できたのも全てこの香油のおかげだ。
売り物ではないと言っていたが、頼めばまた作ってもらえるだろうか。
もし生きて戻ってこれたならすぐに店に行こうと考えたクレア。
リヴァイ以外の事でも生きて帰りたいという理由ができたのはいい事だ。
香油屋夫妻の笑顔を思い浮かべると、クレアは最後のひと掬いを指にとり首元に塗り込んでいく。
そして、まとめた髪に乱れや緩みがない事を確認すると、飛び出すように部屋を出て集合場所へと走って行った