第70章 前夜・交わる想い
医師の診断通り、10日で訓練に復帰できたクレア。
休んでいた本当の理由を知らない兵士達はクレアの復帰を笑顔で喜び迎え入れた。
そしてクレアの復帰はタイミングよくも、ハンジが言ってた新兵器の完成日と重なり、早速威力実験となった。
中央憲兵が隠し持っていた新技術を導入して作られた新兵器の名は「雷槍」。
カイテ字の如く“雷”の“槍”だ。
鎧の巨人には立体機動装置の刃は無力だった。
今のところ鎧の巨人に対抗できる攻撃手段は巨人化したエレンの絞め技や関節技。
それとここ数日の実験で獲得した、手先に硬質化を集中させて破壊力を増した“硬質化パンチ”だ。
しかし、エレン頼りの攻撃だけでは不十分。
調査兵団は壁の穴を塞ぐだけではなく、この壁内の脅威となっているライナーとベルトルトを“確実”に殺さなくてはならないのだ。
それで開発されたのが“雷槍”だ。
大木を一瞬で真っ二つにする事が可能な程の威力を持っている。
まさに雷が落ちたような破壊力だ。
どれだけ効果を発揮できるのかは実際にライナーに撃ち込まなければわからないが、期待は十分にてきるだろう。
しかし、弱点もある。
雷槍はその破壊力ゆえに撃った本人にさえ危険が及ぶ武器。
爆破に巻き添えにならぬよう、雷槍で攻撃できる条件は、目標の周囲に十分な立体物がある時に限られる。
雷槍で攻撃できるチャンスはこの様な条件下しかない。
しかも、正確に狙いを定めなければ威力は半減してしまう。
コントロールや使用条件が極めて難しい代物だが、刃は無力で傷1つつける事ができないのだ。
ライナーにはこの雷槍に賭けるほかなさそうだ。